2006年02月25日

彼女


彼女の背中には羽があった


柔らかそうで
桃色で
綿菓子みたいに
甘そうな


彼女はどこへでも飛んでいけそうだった


わたしの背中には羽が生える気配すらなかった




でも、よく見たら

彼女の背中に羽は生えてなかった

どこへいった?





まぁ、いいか。

羽なんてどうでも。




彼女とわたしはこの地上に立っている

向き合っても
後ろを向いても
下を向いても

この地上に立っている

それでいいんだ

posted by ひまわり at 03:11| Comment(0) | TrackBack(0) | 800字小説 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年10月27日

青い夢

「幻の蝶を探しに行きませんか」ネットの血の通っていない文字は僕を妙に熱くした。
僕のように虫好きな人が集まるサイトの一つにそんな募集をしていた。



真理子に遠まわしに結婚をせまられて、僕はつい最近プロポーズをした。
言わせたのにもかかわらず、真理子は驚いた顔をして「いいの?」と声を震わせた。
いいも悪いもなく、飛びついてきそうな真理子がかわいくて笑ってしまい、
後に大ゲンカになったが、結婚の話はまとまった。

結婚の意志さえ決まってしまえば、女の行動はとにかく早い。
化粧もこれくらい早いといいのだが。

僕の土日は式場めぐりでうまり、真理子は毎日がお祭りのような口調だった。
今日はドレスの試着もできる式場見学プランとかで、化粧に気合が入っていたらしい。
僕から見るとたいして変わっていないように見える。

たくさんのきらびやかなドレスの中で、味気ない格好をした僕はただの置物だ。
シャッとカーテンが開いた。

「これ派手かなぁ?」

式場も決まっていないのに、もうお色直し用のドレスを試着している。
青いドレスを着た真理子は意外にも似合う。

「青いちょうちょみたいで、いいよ。」

「はぁ?なによ、それぇ。」

「誉めてるんだよ。ちょうちょみたいにキレイだって。」

「嬉しくないわよ!」

シャッとカーテンを閉めてしまった。


僕は小さい頃から虫が好きだった。
進学のたびに「虫を研究したい」と父母に言い続けたが
「いつまでそんなこと言ってるんだ」と軽くあしらわれていた。
気が付けば、満員電車の似合うサラリーマン。なんてことない平凡な生活だ。


真理子とホームで別れると駅ビルを通り抜けてコンビニへ向かう。
通り道、デパートの映画館で上映されているポスターが目に止まった。

――約束の場所で――
そう書かれたタイトルと見つめあう若い男と女。

約束・・・・・・・・・。

ふっと雑踏の音が消える。ぼんやりと小さな一人の女の子が浮かぶ。

「おとなになったら、なんになる?」

「ぼくは、むしのはかせになる」

「じゃぁ、おはなにはちがきたら、たすけてくれる?」

「うん、いいよ」

「あとおはなにちょうちょがとまったら、なまえおしえてくれる?」

「うん、いいよ」

「やくそくね」

「うん、やくそく」


あれは、幼稚園?それとも・・・・?
そんなやりとりが頭の中を駆け巡った。



ポケットの携帯を手に取ると、一気に雑踏が耳に流れ込んでくる。
僕は真理子へリダイヤルする。
僕のうまったスケジュールを取り戻すために。



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お題:「ラッシュアワー/約束の場所/青い蝶が」


自分の意思を強く言えない情けない男を書いてみました。
タイトルの青い夢は、結婚から逃げたいという男版マタニティブルーの青と
幻の蝶探しの旅に参加したいという小さな夢をかけてみました。

800字飛び出ました(笑)
男の気持ちを考えながら書くのも楽しい♪
本当は、幻の青い蝶を追い求める男の話にしようと思ったのですが
とても800字でまとめられそうもなくなったので
結局夢を求められなかった男として話を作りました。
posted by ひまわり at 12:20| Comment(2) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2005年10月21日

赤い日  

アスファルトの道。見上げた空は曇り空。わたしは何かを探している。
そろそろ喫茶店が見えるはずの曲がり角で立ち止まる。

確かこの辺だったのに見当たらない。

振り返ると突然現れたかのように喫茶店が目に飛び込んだ。

いつの間に通り越してしまったのだろうか。

外は寒いのでとにかく中へ入り、コーヒーを注文する。
足が冷たい、手も。
そういえばこの店内、暖房がきいていない?
外と同じくらい寒い。

早く温かいコーヒーが飲みたいなと思っていると、
若い店員がコーヒーではなく、小さな硝子の小瓶をテーブルに置き、
「探していたのはこれですよね。」と言った。

探していたもの、わたしが?
手にとってその小瓶を眺めているとだんだんと視界がぼやけてきた。


わたしは目が覚めた。いつの間にか寝てしまったのだ。

部屋は薄暗くひんやりしている。
ローテーブルの上には、白いマグカップが二つ、小さめのホールケーキ。
白い生クリームにラズベリーが飾られ、シンプルだが人気のあるお店のケーキで
この日のために予約を入れておいたものだ。

わたしの隣には彼。

彼は体を丸めてソファに顔をうずめている。
今日もお気に入りのくたくたのトレーナーを着ている。
彼のにおいが染みこんだトレーナー、わたしの大好きなもののひとつ。

わたしは彼のにおいごと抱きしめるように彼の胸に手をまわし抱き起こす。
わたしの腕にじんわり、ぺたりと何かがはり付くような感触。
冷たく重い彼の体を抱き起こし、そっとよりかかる。

ふうとため息。

白いマグカップをとり、ゆっくりと冷えきったコーヒーをすすった。
赤く染まった指が白いマグカップに色をつける。

「あったかいコーヒーをあなたと飲みたかったな・・・・・・」

わたしは、また彼によりかかり、そっと目を閉じた。
わたしはケーキを切ろうとしていたのに、なのにあなたがあんなこというから・・・・・・。
あなたはわたしと約束したのに。

先週の水曜の夕暮れ時、あなたはわたしにこう言った。

「今度こそ、アイツと別れるよ」

決心をした目だった。

夕日で赤くオレンジに染まった雲がとてもきれいな日で、
わたし、幸せだったのよ。

とても・・・・・・・とても・・・・・・・・。







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お題:「水曜の夕暮れ/曲がり角で/硝子の小瓶が」

初めて参加させていただいたのに、締め切りすぎてしまいましてしみません。
あと「硝子の小瓶が」なのに「硝子の小瓶を」と勘違いしておりました。
次回からしっかりやらせていただきますもうやだ〜(悲しい顔)

火サス(火曜サスペンス)をイメージしてつくりました。
空想は大好きなのですが、なかなか言葉が出てこなくて
あらためて、難しいなぁと思いました。
でも、とっても楽しかったのでまた挑戦したいと思います♪

posted by ひまわり at 15:08| Comment(5) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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